2012.03.19
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漫画家ヒロユキ先生のトキワ荘プロジェクト講習会講義録公開!

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(写真:ヒロユキ先生)


2011年8月6日に漫画家のヒロユキ先生に、トキワ荘プロジェクト入居者向けに講習会を行っていただきました。その講義録を公開いたします!ヒロユキ先生、お忙しいなか本当にありがとうございました。

講師プロフィール
漫画家。東京アニメーター学院卒業後、同人誌を描きながら「まんがタイムきらら」等にて「ドージンワーク」を連載。現在は「月刊少年ガンガン」「ヤングガンガン」にて『マンガ家さんとアシスタントさんと』を連載中。

―今回はかわいい女の子の描き方という議題でお話しいただければと思います。

絵についてどうすれば、というのは口頭でどうこう言うのもアレなので、絵以外の部分で何とかする方法をメインで話したいと思います。まず前提として、可愛いとか、かっこいいとかは好みの問題が大きいと思います。その上で、まずは自分がそのキャラクターを可愛いと思わなければならないと思います。キャラクターに関して可愛いと思っているか、思っていないかによって作画やネームにも影響が表れてきます。なので、まずは自分のキャラクターの可愛いポイントを見つけなければならないと思います。

ざっくりキャラクターの方向性を決めてはいるんだけど、いまいちかわいさがでない、いう場合が連載をやっていてもあります。そういう時は、そのキャラクターに、他にどういう要素がありそうか、どういう要素を足せばもっと好きになれそうか、とか考えます。もちろんあまりなんでもかんでも足せばいいってものではないと思いますが。

キャラクターには色々あると思いますが。人にはそれぞれ好みがあるわけですから、その好みを反映させればいいと思います。売れているキャラや人気のあるキャラというのは確かにありますが、自分が理解できないものを模倣しても、いい結果はでにくいと思います。
ただ、理解をしようとする努力は非常に大切だと思います。

例えば、「私は萌えというものが理解できない」という方が無理に読者に合わせて萌えキャラを作ってもあまり良い結果にはなりません。自分でどこがいいのかを理解していないからですね。

1人のキャラクターがいたとして、そのキャラクターに抱く感想は人それぞれですよね。『ONE PEACE』のルフィにしたっておバカなところがいいであるとか、仲間思いな所がいいとか、さまざまな要素があります。どういう部分が好きかというのは自分の好みになってくるので、自分の好みを理解する必要があります。

僕はあまり個性という言葉があまり好きではないんです。個性がない、とか言われても具体的にどうしたらいいのかわからないので。なので僕は、「好み」と言う様にしてます。マンガを描く際に、キャラや、設定・シチュエーション等に自分の好みを入れることで特徴が出ると思いますし、おそらく新人の方で、そこが足りずに足踏みしている人たちは多いと思います。可愛さとかに関してはこんなところでしょうか。

あとはそんな「好み」とかを、僕なりにマンガそのものに生かすやり方を。
皆さんは持ち込みをしてますか? 普段編集さんになんて言われますか。

―(作品を読んで)分けがわからないと言われました。群像劇みたいなものを描いてと編集者に言われ、読んだこともないまま描いたらそう言われました。なんとなくで描いてしまったので…。

それは編集さんと一緒に作っていて陥りやすいパターンな気がします。この手の失敗はよくある事だと思うので、僕がその失敗をしない為に気をつけていることを話します。まず僕は、正直なところ、マンガ家を目指したときに、どうしても描きたいものがあって、マンガ家を目指したわけではありません。割と単にマンガ家になりたかっただけでした。皆さんはどうですか。これを強烈に描きたいというのがある志望者は意外といないんじゃないかと思うんですが。

で、特別に描きたいものがない中で漫画家をやっていくにはネタを出さなければなりません。0から考えなければならないというのが前提にあります。そこをどう考えるのか。やはり漠然と考えるのはきついですよね。編集者の方にお題を提示された場合は別ですが、基本的には自分で考えなければならない。さらに、面白いものでなければならない。

面白い漫画というのは何を持って面白いのかというと、1つの要素として「おいしさ」というものがあります。例えば、ものすごく悪い奴を強い自分が倒すことができるということも1つの「おいしさ」です。好きな女の子と結ばれるのもそうです。「いいな」と思える部分です。この「いいな」と思える部分を中心にキャラなり設定を考えます。この「いいな」という部分を描き手がキチッと押さえておけば、描き方が悪くてつまらない場合でも修正が可能だと考えています。

僕も「いいな」という部分が明確になっていないと、新しい作品は作れません。僕はコメディ漫画を描いているので、ストーリー漫画とは違うのではないかと思われるかもしれないですが基本は同じだと思います。そして人によって「いいな」という部分は違いますし、僕なんかは、可愛い女の子が好きですのでそういう漫画を描いています。人によってはゾンビに囲まれて怖い思いをしたい方もいらっしゃるでしょうし、悪い事をしてみたい、というのもきっとあるでしょう。

自分の「いいな」を明確にすることが編集さんにも作品のよさを伝える最初の一歩かと。これが明確になっていなくて、ただ単に人の真似をするのは良くないです。

例えば読者として、自分が好きなマンガを読んで「いいな」と思い、「こういう漫画」を描きたいなという気持ちが一番大きくあって、真似して描いて、それで面白くなることは難しいと思います。

というのも、自分以外の他人が作った「いいな」を借りてきていることがまずいです。他人の「いいな」を借りてきた場合、うまい人や先に発表した人が勝ちます。ものすごく上手ければそれでも通るかもしれませんが基本的には通りません。というか、人の真似をしただけのものを持ってこられても、編集さん的には、基本的にその作者に魅力を感じませんよね。真似をした作家が、その雑誌で描いてる場合は特に顕著になると思います。すでにあるものはいらない、というのがマンガの基本かと思います。

ですので、新人に必要なことは「いいな」という部分を自分で見つけてくることです。この自分で見つけた「いいな」をいかにたくさん持っているかというのが、その作家の長期的な武器になると思います。

誤解を避ける為に言うと、最初は真似でも良いと思います。ただ、そこから、「自分だったらもっとこうする」という部分を、出来る限り作ったほうがいいと思います。その「自分だったら」の部分が、自分が「いいな」と思う何かなのではないでしょうか。


僕はすぐにデビューできたタイプではなく、何度も失敗して、がっかりした経験を繰り返しながら漫画を描いてきました。おそらく今日ここにいる方々も、すんなりデビューできているというよりかは、今まさに苦労されている最中だと思います。ただ、あまり寄り道はしたくないですよね。描いた枚数と実力の伸びをなるべく関係性のあるものにしたい。そう考えると、ネタを考えている時間をなるべく減らしたいですよね。何かを手を動かしたいですし。

うまく説明できるか自信がないのですが、「いいな」にどんな例があるかを。バトルマンガでたとえるなら、まず戦い方。「コブシで戦う」のか「特殊な能力で戦う」のか、「あるルールにのっとって戦う」のか、等々。特殊な能力なら、どんな能力なら自分が「いいな」と思うのか。ルールにのっとって戦うなら、どんなルールにのっとって戦ってみたいか、そういうところを出来る限り細かく好みを入れて考えて行き。バトルですから、相手がいるわけで、相手に関してはやっぱり、「どんな相手と戦いたいか」を考えるのがいいと思いますね。もちろんそこにも当然好みを入れて欲しいので、どんな敵が、どんな力を持っていて、等々、様々なところに自分の好みを入れて欲しいです。で、やはり気をつけて欲しいのは、何となくよくいる敵キャラを描く事ですね。正直お勧めしません。どうでも良いキャラは、なるべく出したくないですよね。

もちろん他にも様々な部分で「いいな」と思える事をどんどん盛り込んでいきます。様々って言いましたが、最終的にはすべてのキャラ・シーン、一つ一つの台詞ですら、そういう好みを是非どんどん入れていって欲しいです。

で、それが読者も楽しめそうな事なのかどうか、を考える事もどうぞ忘れないでください。

「いいな」という事は意外なところ事に転がっています。それを意図的に探すかどうかというのがすごく大事になってきます。例えば、スポーツだって、プレイするのが好きな人がいれば、応援するのが好きな人、監督するのが、サポートするのが好きな人、プレイするのが好きなら、どんなプレイスタイルで、どんな自分(主人公)が、どんな相手と、どんな状況で、と、細かく考えていく事が出来ると思います。自分はどうなのか、それを、様々な事で考えてみてほしいです。


そんな自分がいいと思っている部分を、「いいでしょ?」と編集者に見せることが大事なんです。そこを編集さんが理解できれば、「いいな」という部分を読者にもっと伝わるようにする為の、話し合いができるようになります。逆に、編集さんにその片鱗すら伝わらないとおそらくボツです。じゃあまた新しい作品を描いてきてくださいということになります。この部分をクリアできると編集者との打ち合わせというのはスムーズに進むようになるんじゃないでしょうか。

うまく打ち合わせができないとボツ→次の作品→またボツというようになかなか先に進めません。それは非常に心が折れる作業ですのでなるべくそこは避けたいですよね。

―いまヒロユキ先生が描いていらっしゃる『マンガ家さんとアシスタントさんと』の「いいな」は何ですか?

『マンガ家さんとアシスタントさんと』はですね、密室がありまして、主人公の漫画家が漫画を描いている。で、基本的に漫画を描く作業というのは非常に地味なので、そこに1人女性のアシスタントが入ってくる。男と女が密室で2人きりでいると、男的には、なんかしらちょっかいを出したくなるじゃないですか。下ネタ言ったらどうなるだろう、とか、ハプニングで胸をさわっちゃったらどうなるだろう、とか。その上で軽くあしらわれたら、ちょっとドキドキしちゃう、とか。…こんなものです(笑)もちろんそんなしょーもない事を描くのは、かっこ悪いんですが、そこは正直に描いちゃいます。

それで、ちょっといたずらをした時に相手にすごい嫌がられるとへこむのでそこはバランスが大事で、駄目出しはしつつも、そこにわずかながらの愛を感じることができれば逆に嬉しいよねという、そういう自分の趣味を正直に入れていくことによってなんとなくそれが読者に伝わります。

繰り返しになりますが、バトル漫画にしたって、弱い男の子を助けたいという人もいれば、かわいい女の子しか助けたくないという人もいると思います。僕はどうせなら、超絶美少女のお姫様とかを助けたいですね(笑) そういう事が漫画を描く上では僕は大事だと思いますよ。


若干話がそれる気がしますが、僕は本当は『DRAGON BALL』のような大ヒットバトル漫画を「描きたい」と思っていましたが、案の定それは無理だったので、とりあえず諦めよう、と考えました。これは僕がよく言うことなんですが、描きたいものを描いて駄目なら、描けるものを描いてみよう、と。

描けるものというのは、自分が普段考えていること。日常的にどういう時に「いいな」と感じているかという事ですね。
案外「描きたいもの」って、自分とは程遠い、背伸びしてるものが多かったりしません?

ちなみに蛇足かもしれませんが、僕がバトルマンガでうまくいかなかった最大の原因は、やはり「自分だったらもっとこうする」がそれほど無かった事でしょうね。

天才、という人間がいるのかどうかは分かりませんが、もしいるなら、おそらく今まで使われていなくて、多くの人が共感する「いいな」を本能的にわかっている人でしょうね。多くの人は今まで使われていない「いいな」に気づかないんです。どんな人でも、他の誰かと全く同じ人生、感じ方の人はいないのだから、必ず自分の「いいな」という部分を持っています。ただ、なかなか気がつかない。それに気付くためには普段から自分があらゆることに関してどういう風に感じるのか、またなぜそう感じるのかという事を考える癖をつけることです。

なぜ自分はそう感じるのかという事が分かれば、あらゆることに応用できるようになります。自分が経験したことを別のキャラクター・別のシチュエーションでも再現できるようになると思います。

結構皆さん普段から漫画を読まれていますよね。そうしていると次第に漫画のルールっぽいものが染みついてしまいがちです。本当はそんなものはないのですが。なんか、こうしなければいけないんじゃないかという強迫観念に取りつかれます。僕も昔はよくありました。

少年漫画はこうしなければいけないとか、少女漫画はこうしなければいけないとか、少なからず漫画を読んでいる人にはありますね。

基本漫画は読んだほうがいいと思いますが、読むことで変なルールが染みついてしまう事には注意してください。それは結構枷になってしまう事があるので、むしろ自分でルールを作るぐらいのつもりでやってください。僕的にいは、編集者の方に「なんだよこれー」と笑われるくらいの方がいいのかなと思っています。無難になってしまうよりは。やりすぎて怒られるとかもないでしょし、多分(笑)

あ、とは言え、天才じゃない限り、やっぱりマンガ自体は沢山読んだほうがいいと思います。結構新人さんと話していて感じるんですが、あんまり流行のマンガをチェックしてない人が多い気がします。個人的には、最低今売れてるものくらいは一通りチェックしておいたほうがいいと思います。売れてるといっても、単巻100万部オーバーの誰でも知ってるマンガだけじゃなく、「そのジャンル」で相対的に売れているもの、はチェックしておいて損は無いんじゃないでしょうか。基本、自分が行こうとしているジャンル優先でいいと思いますが。

なんにせよ、読者が今何を楽しんでいるのか、が分からなくなると、やばい気がします。あと、そもそも今のマンガの市場に、どんなマンガがあって、どんなマンガが無いのかを知らないと、そもそも土俵に上がれない感じがしませんか?
個人的には、まずそれくらいマンガを読んだ上で、さらに他の映画とか小説とかに行く感じがいいのかなーと思ってますが、このあたりは人それぞれな気もします。載せる雑誌とかにもよるかもしれません。

描けるもの描いて、それが人に受けると、(マンガ家を志望する際)描きたかったわけではないものでも、だんだん好きになりますね。いや最初は嫌々描いていると言うわけではないですが。でもやっぱり描けるのであれば僕は『DRAGON BALL』みたいなのが描きたいです(笑)ただ、もしかしたらそれは隣の芝生を見て羨ましがっているだけなのかもしれませんね。



上記の内容など、本講習会に関するお問い合わせはtokiwaso@newvery.jpにお願いいたします。



 
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