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(写真左から菊池、編集長:有藤様、石田様)

10月29日(土)に『ビッグコミックスペリオール』の編集長である有藤智文様、編集者である石田貴信様によりますトキワ荘プロジェクト漫画講習会、【連載作家になる方法】を一般の漫画家志望者向けに開催いたしました。今回はその講義録の第4回を公開いたします。
有藤編集長、石田様、お忙しいなか本当にありがとうございました。

 「連載作家になる方法」講習会
(有)スペリオール編集部 編集長 有藤智文
サンデー、スピリッツ、オリジナル、スペリオールなど数々の雑誌を歴任
担当作品:『風の大地』『高橋留美子劇場』『よいこ』『やったろうじゃん!!』、『しっぷうどとう』『青空』『タッチ』『うる星やつら』など多数
(石)スペリオール編集部 編集 石田貴信
担当作品:『医龍』『幽麗塔』『同窓生』『非婚家族』『ルナハイツ』『タキシード銀』など
(菊)トキワ荘プロジェクトディレクター 菊池健

Q.作家性(自分の特徴や独自性)が足りないということに関して

(菊)独自性というのは強すぎてもいいわけではないですし、キャラと同様に作家さんが自分の特徴としてどんなものを育てていけばいいのか悩ましいところであると思います。好き嫌いがわかれてしまうためにマニア向けの作品になって一部の熱狂的なファンがついたり、万人向けのものの作風があれば、新しいものを描くというものもある、この辺を議論できればと思います。

(石)作家性という言葉はありますが、うまい作家さんに限って自分の作家性というものを自ら主張したりせず、それを現時点での自分の売りのことだと理解している場合が多いですね。
  作家性を表現するという言葉は少し疑わしくて、本当は、自分の売りを理解して面白い漫画を描いているうちに、いつのまにか他人が勝手に自分の作家性を言ってくるんだと思います。
  また、作家性という言葉は怖いとも思います。新人さんがそれを意識し過ぎると、手癖を自分の作家性だとだと思い、成長を止めてしまうことがあります。
  たくさん描くことによって、今まで描けなかったものを描ける力が身につきます。そうすると、作家性はただの言い訳だったということになるかもしれません。

(有)作家性なんていうものは必要ありません!これは逃げのように使われる言葉であって、作家性というものは描いている人の性質を表したことで、その人の作家性が作品に現れているというのはちょっと違うと思いますね。漫画で言う作家性は「売り」ですからね。
  基本的に読者は漫画家に関して無関心です。なので、読んでいる人が作品を通してその人の特徴を勝手に作家性だと思ってくれればいいわけです。漫画家や編集者がそれを考える必要はないのかなと思いますし作家性という言葉は邪魔な言葉であると思います。
  また、独自性が足りない、ここで言う独自性とはストーリー展開と絵柄ですが、を皆さん気にすると思いますが、誰々に似ているとかこれは誰々のアシスタントだなとか言われるということに悩む必要な無いということですね。
  一つ自分の例を挙げると、私がスピリッツにいた時代に読み切りは載ったけれどもその後に伸び悩んでいる、という新人漫画家がいました。絵をもっと魅力的にするにはどうしたらいいのかということを考えたときに、もっと先生の絵の真似をしてみなさい、という様に指導をしたことがありました。結局真似をしても同じ絵にはならないわけですからね。君の漫画のステージを一個上に上げるには絵を変えるしかないからという話しをしました。そうしたら先生の絵と若干似ているという時期もあったのですが、段々自分のものにしていきました。
  ちなみに、今例を上げたのは師匠が窪之内英策先生で、弟子が盛田賢司先生です。その後、盛田君が窪之内先生の絵の描き方を真似してスピリッツの連載を勝ち取ったわけですね。似てると言えば似てるけど、似てないと言えば似てない。そのくらいの絵なので特に気にする必要はないように感じています。

(菊)高橋留美子先生、あだち充先生の「売り」のお話しいただけますか。

(有)難しいですが、あだち先生はまず絵、それからテンポですかね。はぐらかし方とか。勿論それらが出来るベースとしてストーリーの流れをきっちりと作られていることがあります。
  あだち先生、高橋先生ともに落語がお好きです。落語にはフリとかサゲとか形がありますが、上手くテンポに活かされているのかもしれません。

(菊)高橋先生はともかく漫画を描くことお好きと聞きますが。

(有)本当にそうです。高橋先生は、私が『うる星やつら』を担当していたときに、同時に『めぞん一刻』を連載していてました。一方の作品を描いてるときに、もう一方の作品を描く事が「息抜き」になるという位です(笑)これまで、原稿を落とすという話を聞いたことがなく、他にも『高橋留美子劇場』『1ポンドの福音』など、年末進行の中で同時進行など多くご一緒させていただきましたが、ともかく休んだことがありません。そんなことから、新入社員からのお付き合いですが、今も尊敬の念を込めて高橋先生と呼ばせていただいています(笑)

Q、担当している新人漫画家にこのまま続けても仕方がないという引導を渡したことはありますか?

(石)引導を渡したことはあります。ただ、私が引導を渡したところで、別の雑誌に持ち込むことはできますから、結局本人の問題ですね。その経緯についてですが、その新人さんは大学を卒業する間際だったんですね。そこで就職をするのか、漫画家を目指すのかという選択を迫られていた中で、私が漫画家を目指せと言えば漫画家になり、就職しろと言えば就職するという状態でした。
  正直に言うと、後少し見てみたいなという気持ちがあったのですが、それはほとんど私のわがままで、きっとデビューさせてあげることはできないだろうなと思っていました。なので、この気持ちを1度そのまま伝えまして、就職するように言いました。本人も別の雑誌に持っていかずに就職しました。その数年後に元気でやっていますという報告を受けたという経験があります。

Q.なぜその方に引導を渡したのですか。

(石)その新人作家さんが就職を蹴ってまで、漫画家を目指すのに向いていないと思ったからです。就職と比較したときに、そういった判断に至りました。

(有)私も引導を渡すという言い方はともかくとして、きついんじゃないかなという話をしたことはあります。そうは言っても1〜2年はやり取りをするわけですが、持ってくるネームや原稿に成長が感じられなくなったときがやめどきだと考えています。特に絵柄が全然伸びていない時は言う場合はあります。
  頻繁にネームを持ってきてくれる方に対してそういった事を言うのは大変つらいことですが、きちんとこちらの意図を説明しながら、この雑誌では難しいかなと言う事はあります。そういう人で、別の雑誌でやっている人はいるかもしれないし、何らかの漫画創作活動を行っている人はいるかもしれませんが、そこまではさすがに認知はしていませんね。
  適切な例になるかはわかりませんが、ある有名な漫画家さんは漫画家になるのをあきらめて就職しようとしていた時に、ある編集者に絵柄を誉められて、その後今のような漫画家になっているというお話もあります。あきらめるなという言いたいわけではありませんが、どこで何が起こるかという事は分からないですからね。見る目がない編集者もいますという事なんですけれども。

会場からの質疑応答

Q.スペリオールさんはどういう読者層を意識しているのですか。

(有)正直に申し上げますと、具体的にこういう人という風には考えていないです。そう言うとすごくいい加減に思われるかもしれませんが。コアな対象が男性読者というのは変わりないのですが、ただ男性に限定しても読者層が広がらないので女性にも読んでほしいと思っています。読者を絞り込むことができなくなったもっとも大きな原因は雑誌が弱くなってしまったという事です。
  私の個人的な考えだと、スペリオールの読者層を小学館のクラスマガジンの中のひとつの雑誌であるからという事で、20代後半〜30代前半のサラリーマンという層に絞ってしまうと、どんどん読み手の層が少なくなってしまうと思います。単行本を買ってくれる若い読者が見向きもしない雑誌になってしまうと潰れていくだけなってしまうので、読者を絞るという行為はスペリオールに限らずリスクのある行為となってしまいますね。ただ、小中学生が読む雑誌であるとは思わないので、エロティックな作品も入っていたりはするのですが、そういう意味ではある一定の年齢層だけを狙うという事は他社を含めてなくなっていくのではと思いますね。

Q.漫画家さんに対して資料代を、編集部が負担することがあるのでしょうか。

(石)場合によっては編集部が負担することもあります。それは、連載プレゼン用のネームであったりとか、あるネタでの読切ネームをどうしても描き上げさせてあげたいが、その資料を集めるには新人の財力では難しい、という場合などにです。あくまで、我々が適切であると判断した場合に負担することもありえます。

Q.70%で見る事のできる表現力を身につける必要があるとの事であったのですが、表現力に関してもう少し詳しく教えていただけますか。

(石)表現力は、読者に自分のイメージを伝える技術のことです。
  たとえば、漫画家は、漫画の中でキャラクターを動かすために、出てくるキャラクター全ての芝居を絵で表現しているわけですよね。まるで役者のようです。このキャラクターの芝居は表現力の一部です。
  また、エピソード力、コマ割り、カメラワーク、これらも表現力の一部ですね。
表現力とは何かという質問は漫画とは何かという質問となり、とても難しいので、即座に確かなことをお答えすることはできませんが、今私が思い付く範囲内ではそのような所です。

Q.新人コミックオーディションに4コマ漫画は入るのでしょうか?

(有)入ります。ご安心ください。よろしくお願いいたします。

Q.連載作家になったばかりで単行本を販売しないで漫画のみで生活してる人はいるのでしょうか。

(有)週刊誌、隔週誌、月刊誌とさまざまな種類の雑誌がありますのでなかなか一概には言えなのですが、まず月刊連載1本では生活していくのは無理ですね。1人で描いているのであれば、もしかしたらギリギリ生活できている人もいるかもしれません。ただ非常に低い生活レベルかなと思います。
  連載貧乏という言葉は昔からあるのですが、週刊、隔週で連載をするためには当然、仕事場であったり、アシスタントが必要です。そういう意味では単行本が出て、ある程度の部数にいかない限りは生活水準を確保するのは難しいです。原稿料も最初の方は当然安いですから、正直に言うとその段階ではまだちょっと厳しいかなという印象ですね。
  ただし、出版社によって差はあると思いますが、小学館では新人が新たに連載を始める際に連載準備金が出ます。連載をするにあたって必要な住居、アシスタントへの給料を補てんする形のものは会社から出すことになっていますので、最初からいきなり青息吐息という事はないので安心してください。

Q.有藤編集長と石田様が個人的に読んでみたいジャンル、テーマはありますでしょうか。

(石)私が今スペリオールで見たいと思うのは、『医龍』に代わるヒーローものですね。特に新人作家さんが持ち込んてくるヒーローものにアンテナを張っています。

(有)僕もヒーローものはほしいですね。命のやり取りを表面から捉えるヒーローものですね。それこそ『医龍』になってしまうのですが、それほど読み応えのあるものというのが柱として必要と思っています。
  全くの個人レベルで言えば熱血スポーツものが好きなのですが、やり過ぎて飽きてしまったかなと(苦笑)野球ものが好きで、ずっと野球ものをやっていたのですが、さすがに自分の中での弾が尽きたので、自分の想像を超えるスポーツものが来ると「おっ!」と思うかもしれないです。
  あとこれも個人レベルなのですが、過去に何度か恋愛ものを立ち上げようとしてずっと失敗してしまっているので「これだ!」という恋愛ものが来たら、うれしいですね。

Q.手癖で描いてしまうとはどのような状態を指すのですか。

(石)例えば、自分の得意なアングルのみで描いてしまうという状態。そういう場合、さまざまなアングルで描くという事を訓練する必要があります。こういった事の繰り返しの中で技術は上がっていきます。

Q.自分の納得がいかないものでも、2週間に1本はネームを持っていった方がいいのでしょうか。

(石)2週間と3週間でそこまで差はないと思いますが、今の自分の力で描けるものは限られています。ですから、2週間を3週間に伸ばしたり、3週間を4週間に伸ばしてみたりしても変わらないと思います。そうしていると、いつの間にか1年間経っていたという事もしばしばあります。なので、どこかでけじめをつけて、自分の持ち込むペースというものを確立する必要があると思います。

Q.絵柄に関して、どのレベルまで上手になれば載せてもらえるという基準はありますか。

(有)これは非常に難しい問題です。一時期ヘタウマなんて言うものが流行ったのですが、僕の個人的な意見では下手を売りにするというのは好きではないです。それを勘違いしてヘタウマだと言って、送ってくる作品にはバツをつけてしまいますね。絵がうまい上手くないという基準は僕と石田でも全然違うと思います。
  明らかに上手いというのは似通うかもしれませんが、ある一定のレベルという基準は個々の感覚なので、絵に関して基準はありません。なので、遠慮したりためらったりすることなくどんどん持ち込んだり投稿したりして、自分がどのレベルにいるのかを把握して、自分の中で判断することがいいと思います。

(石)スペリオールの作家さんに中には抜群に絵が上手な作家さんがいます。それで、よく尻込みされる作家さんが多いんですね。『医龍』の乃木坂先生もスペリオールで連載される時に緊張のあまり眠れなかったらしいですね。その乃木坂先生も今では新人に威圧感を与えるような抜群の絵柄なのですが(笑)
  ただ、雑誌全体をよく見てください。そうでない人も中にはいます。そこまで上手な絵は求めていないです。上手くなくても頑張っている絵であれば全く問題ありませんので、どんどん応募して下さい。

完。

上記の内容など、本講習会に関するお問い合わせはtokiwaso@newvery.jpにお願いいたします。



 
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