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(写真左から菊池、編集長:有藤様、石田様)

10月29日(土)に『ビッグコミックスペリオール』の編集長である有藤智文様、編集者である石田貴信様によりますトキワ荘プロジェクト漫画講習会、【連載作家になる方法】を一般の漫画家志望者向けに開催いたしました。今回はその講義録の第3回を公開いたします。
有藤編集長、石田様、お忙しいなか本当にありがとうございました。

 「連載作家になる方法」講習会
(有)スペリオール編集部 編集長 有藤智文
サンデー、スピリッツ、オリジナル、スペリオールなど数々の雑誌を歴任
担当作品:『風の大地』『高橋留美子劇場』『よいこ』『やったろうじゃん!!』、『しっぷうどとう』『青空』『タッチ』『うる星やつら』など多数
(石)スペリオール編集部 編集 石田貴信
担当作品:『医龍』『幽麗塔』『同窓生』『非婚家族』『ルナハイツ』『タキシード銀』など
(菊)トキワ荘プロジェクトディレクター 菊池健

Q.キャラクターを立てろと言われるのですがどうしたらいいでしょうか?

(石)「キャラクターを立てろ」というのは時々編集者の逃げ口上でもあるなと正直思います。自分も振り返ると、特に言うことがないとそう言ってしまうことがあったかも(苦笑)

(有)これは難しい質問ですね。キャラクターというのは単体で考えるのではなくて結局エピソードの積み重ねになってくるんですね。あるエピソードの中でその人がどういう行動を取る、どういう態度で出てくるということを積み重ねていってその行動に矛盾が出ないようにするということなんだと思います。
  身近な所で考えると皆さんのご家族や友達の中で、あいつだったらこうするなうちの親だったらこうするな、などは普通に想像すると思います。それは要するにキャラクターが立っているということなんですね。
  自分の周りでもイメージ出来ると思います。例えば彼女と向かい合っていて、振られてしまうという場面があった時に、主人公は泣くのか、それともテーブルの下で悔しさのあまりスプーンを折り曲げたりするのか、などどれが一番ふさわしいのかなということを考えます。そして次の行動で例えばスプーンを折り曲げた奴なら、こういう時はこうするだろうということを積み重ねていくということです。
キャラクターを立てろと言われたからといっていきなり裸になって街を走らせてもそれはキャラクターが立っているということにはならないわけですね。

(石)すこしノウハウじみた話ですが、たとえば、感情移入型の主人公の場合、親が殺されるだとか、いじめられっ子であるとか何か恨みを持っていればキャラクターが立ちやすいと昔から言われている。正義のヒーローの場合、最初に敵を作るとやりやすいかもしれません。
  また、日常生活の中でも、例えばメチャクチャ面白いA君を友達や親に話す時に、「そのA君はどう面白いの?」と聞かれて、その返しに「メチャクチャ面白いんだよ」と言ってしまっては表現にならないわけです。どう面白いのか、A君という面白い人はどういうふうに振舞って、私はどう思ったのかといったことを具体的なエピソードをまじえて説明できるようになると、漫画づくりにも生かせるのかなと思います。

(菊)ありがとうございます。ここ深いですね。後で聞こうと思っていたのですが、トキワ荘プロジェクト入居者が持ち込んだ後に編集さんから「あの人は漫画より本人の方が面白い」という話になったことがあります。それを踏まえて最近のとある有名な先生の話の中で僕が面白いなと思っているのは、本人のキャラが濃いと本人の思考パターンが自然と漫画に乗ってきてキャラが立つとおっしゃっていたことです。仮にそうだとすると、本人のキャラが薄い人は困ってしまいます。なので、キャラが薄いと自覚している人はキャラを立てる技術を学ばないといけない、ということでした。これにはなるほどと思いました。

Q.自分のやりたい方向性と編集者に評価されるポイントがずれているのですが、どうすればいいでしょうか。

(有)これに関しては、「やりたいもの」=「向いているもの」ではないことが多々ありますので、もし自分の本意ではない所が評価されているとしたならばまずはその評価に乗っかりましょう!というのが一番いいんじゃないかと思います。
  よくありますけど、こういうのがやりたいんです!と言ってくる人の中には、それは向いていないなと思うことが多々ありますので、冷静に判断できる第3者である編集者が評価している部分にはきちんと乗っかったほうが、後々それに乗っかることで自由度が広がるということもあります。評価された方向で、きちんとできたら、次は比較的自由にやってみましょう、と言ってくれる編集者も多いと思います。まずは評価に乗っかれ、ということです。

(石)私も全く同感です。付け加えると、自分が描きたいと思っているものと、技術が足りたいため自分の手癖で描いてしまっていているものは別です。手癖は、自分が描きたいものではありません。この勘違いには注意してください。自分の可能性を狭めてしまいますので。
  話を元に戻すとプロになるためには読者の評価が全てであるわけです。その意味でも読者に近い第3者の意見に耳を傾けるということは大切だと思いますね。
  ちなみにですが、新人が編集からコレに向いていると言われときは、きっとその分野について何かを持っているんだと思います。しかも、新人本人が自覚していないだけで、本当のところは、新人本人もそれが好きである、ということもあるんじゃないかなあって思うときがある。わからないですけどね。
  いずれにせよ、まずは技術を磨いてみんなに評価されるような漫画を目指してほしいなと思っています。

Q.雑誌の選択に関してはどう思いますか。

(石)これは難しい質問だと思います。新人さんに関しては、私は出ていく人は追いかけないし、持ってくる人に関しては全力であたるというやり方をしています。
  作家さんによっては、雑誌を安易に動くと仕事がどんどん小さくなる、と言う方もいます。実際は、ケース・バイ・ケースですかね。

(有)まだ漫画家としてデビューしていない皆さんに関しては、雑誌やコミック誌を読んでいてこの雑誌でデビューしたいな、と思うことがあると思います。その際には応募するという時に、その回数を決める、ということは一つ大事かなと思います。3回なら3回。担当が全然いないレベルの新人賞に応募するときにも3回なら3回でやってみる。2次には残ったけど駄目だった、というような結果であれば次の雑誌を視野にいれるというやり方がいいのではないかと思います。ドライと言えば、ドライなんですけけれども自分の人生がかかっていることですからその辺はドライでもしょうがないです。持ち込むにしても回数を決める。その回数の中で引っかかるものがなければ次へ、というようにやっていったらいいのではないかなと思います。

Q.ネームを何度直しても通らないのですが何をどうしたらいいでしょうか。

(石)よくあるのが、直しを命令だと勘違いして全部言ったとおりに入れてしまうというパターンです。編集者の言っていることは「命令」では無く、こうだったら面白くなるのではないかという「提案」です。その提案を、もっといいネームを作るために取り入れる、という姿勢で直してもらいたいです。取り入れられないことがあってもかまいません。課題を解決するために、自分なりに別の答えを示すことも必要です。
  何度もやって上手くいかなければ編集者の方からボツネタにしましょうという話があると思います。そうなったら頭を切り替えて次の作品へ移行する方がいいと思います。

(有)これも明確な回数で区切るわけではないですが、3回くらい直して駄目なら次にいったほうがいいと考えて仕事をしています。ネームを直すということは少なくとも編集がいけるんじゃないかな?と思っている状態なわけです。この辺もう少し直そうという風になっていく。ただ、それを繰り返して3〜4回になってくると編集者の方もワケがわからなくなっている状態になることが多いです。失敗したかもしれない、でも引っ込みがつかないからここだけもうちょっと直してみようかなという時もある(苦笑)
  さらに今のネームのチェックシステムだと最初の編集者を通ってもその上でOKがでなければまた直しが入ります。最低1回くらいは直しが来ます。これが最終的な編集長の直しでここを直せばOKということなら話は早いのですが、そうではなくデスク→副編集長→編集長、となってくると担当編集者の時に5回直してそこまで直したのにまた直すのか、ということになってしまいます。
最初の担当編集者の資質による所が大きいのですが、3回直して通らなかったものに関しては一旦見直す、ということが必要かなとは思います。

Q.持ち込み用のネームを描くスピードと本数についてはどうお考えですか?

(石)大体2週間に1回のペースでネームを持ってこられない人は連載の「候補選手」には入らないと思います。それぐらいのペースで持ってくることができないと、上手くもなれないし、連載のペースにも耐えられないからです。
  逆に、このペースで持ってきていただければ表現力が向上します。漫画の能力を上達させる近道です。

Q.編集者さんとのやり取りがうまくいかないことに悩んでいます、どうしたいいのでしょうか。

(石)乃木坂先生との打合せの例をお話しします。私が「ネームのここが良くない。こう直した方がいい。」等と指摘すると、乃木坂先生は「いや、現状の方が面白い」といって、頑なになるようなことはないですね。逆に、私もそうしないようにしています。
  ネームを変えたい、という時は、ネームのある部分に違和感を持ったからです。違和感を持ったら、必ず、それがどういう違和感なのかを伝えます。作家も、どうして違和感を持たれたのか、考えます。互いにそう考えていると、今のネームの何が課題なのかが、見えてきます。
  課題が見えてくれば、それを解決するためには、共に検討します。どちらのアイデアがいい、という次元でなく、第3の案、第4の案も含め共に検討します。まさに共同作業と言えると思います。
直すときに一番良くないのは、話し合いを避けた折衷案だと思います。じゃあ間をとってこうしましょう、と作家が言ってしまったらそれは最悪ですね。
  ただ、乃木坂先生は、新人時代から非常にコミュニケーション能力の高い作家さんでした。編集者の違和感を察知したり、編集者のアイデアを自分なりに消化する勘がよかった。全ての漫画家がそうでなければいけないということはないと思います。ただ、それが出来ると編集者との打ち合わせは非常に楽になるのかなとは思います。

  ただ、新人さんですと、言いたいことを上手く言えず、よくわからないまま「ハイ」、と言ってしまうことがあるんだと思います。そして、そのままネームを持ち帰ってしまうと凄く苦しむと思います。逆に編集者も、こういうケースを一番心配しているんですね。我々としても気を遣わなくてはなりませんが、知らずに苦しめてしまうこともあるかもしれません。
  本当に膝をつき合わせた打ち合わせであれば、そういったこともなくなるのかな、と思います。そういう打合せには、作者・編集双方に努力・協力が必要です。

(有)納得いかないまま直す、というのが最悪ですね。ただ、今の話はこの会場に作家だけでなく編集者がいないといけない話でもあるなとは思います。
  当然、「ここはこうしたほうがいんじゃない?」と言ってくれた編集者の発言に対しては、「いやそうじゃなくてこの場面はこう思ったからこうしたんだ」という作家の意見もあるわけで、そこでちゃんと納得した直し、というか直しに入る前にきっちり話し合ってコミュニケーションをしたほうがいいとは思います。そういった場で新しいアイデアが出てくるということもありますからね。ただ、これは作家の方だけの問題ではなくて、編集者に「俺のやり方に合わせりゃいいんだよ」というのがいると非常に困るので、この話題に関しては自分たち編集者がこことは違う場で新人を育てている編集者たちにちゃんとコミュニケーションを取るように教育しなければいけないなとは思いますね。

Q.ついつい内容を詰め込みすぎてしまうのですが、何を残して何を切り捨てたらいいのでしょうか?

(石)主人公を描くことに焦点を定める、または、テーマや売りに適さない所を切り落としていくということだと思います。
  事前にいただいた本講習会の資料の中に、キャラクターやエピソード数は何個までですか?という質問があります。この質問にどうしても答えなくてはならないのなら、読み切りに関しては、「キャラクターなら2〜4人」と答えますかね(笑)
  ちなみに先ほどから、ノウハウ的なことを言っていますが、漫画の世界にノウハウっていうのはほとんどありません。話半分くらいで聞いてくださいね。

(有)詰め込みすぎてしまうということに関しては入れたいエピソードに優先順位を考えて入れていく、ということしか無いなぁと思います。16ページとか、24ページとか読み切りの形式には色々あると思いますが、詰め込みすぎてしまったとか、そういった癖がある人はプロットを描いてみると意外と収まるかもしれません。例えば小学館の男性向けの漫画雑誌では私が担当していた範囲ではやっていないのですが、少女漫画の作家はプロットを書きます。連載している作品もそうです。大御所だろうが新人だろうが関係なくです。男性向けの漫画雑誌と比べるとページ数が40ページくらいになる作品が多いのでそういったときに、まずプロットを描くんですね。今回の話ではこうなります、ということが書かれている意外と詳細なA4一枚から二枚くらいのものをきっちりと書いて、それを編集者に出します。それで編集者はそれを見て、このエピソードはいい、とかこの辺はもうちょっと膨らましたほうがいいとか、などという打ち合わせが終わってからネームに入るんですね。僕もびっくりしたんですが、未だにものすごい大御所の人でもそういうようなやり方に沿っているとのことだったので、これは講談社とか集英社の編集者の人がやっているかどうかはわからないのですが、小学館に関してはプロットからやっていると言うのを聞いて、整理しきれないというときにはいいやり方だと思いました。読み切りも連載も同じで何ページ描くということが決まっているとしたらページとかコマを考えながらこのへんまでが大体4ページでここまでが10ページで、というエピソードの取捨選択が文章で出来ます。ページの尺に合わないものを考えてしまって、どうすればいいのか困るという人にはプロットを書いてみるという作業は割と有効かもしれませんね。



第4回は12月28日(水)にアップします。

上記の内容など、本講習会に関するお問い合わせはtokiwaso@newvery.jpにお願いいたします。



 
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