2011110917482610449.jpg
(写真左から菊池、編集長:有藤様、石田様)

10月29日(土)に『ビッグコミックスペリオール』の編集長である有藤智文様、編集者である石田貴信様によりますトキワ荘プロジェクト漫画講習会、【連載作家になる方法】を一般の漫画家志望者向けに開催いたしました。今回はその講義録の第2回を公開いたします。
有藤編集長、石田様、お忙しいなか本当にありがとうございました。

 「連載作家になる方法」講習会
(有)スペリオール編集部 編集長 有藤智文
サンデー、スピリッツ、オリジナル、スペリオールなど数々の雑誌を歴任
担当作品:『風の大地』『高橋留美子劇場』『よいこ』『やったろうじゃん!!』、『しっぷうどとう』『青空』『タッチ』『うる星やつら』など多数
(石)スペリオール編集部 編集 石田貴信
担当作品:『医龍』『幽麗塔』『同窓生』『非婚家族』『ルナハイツ』『タキシード銀』など
(菊)トキワ荘プロジェクトディレクター 菊池健

Q.小学館の漫画編集部に伝わる「アイデアノート」とは?

(石)私が新人の頃少年サンデーに配属された時には、漫画の企画を書くために必要な要素をメモとして渡され、それを元に「アイデアノート」を毎日書いて来るように言われました。
  先輩から朝方まで漫画の指導を受け、午前10時までに出社するというスケジュールの合間に書かなくてはならない地獄のノートだったのですが、結局今も「アイデアノート」の書式を使って企画書を書いていますので、漫画の要素がうまく入っていると感じています。
  「アイデアノート」は、企画全体を次のような要素に分解し、そのまま書式としています。

1.テーマ

たとえばヒーロー物語なら、アンチ〇〇である場合が多い。
例)『医龍』:.▲鵐粗本の大学医療▲繊璽爐肪膣屬集まる物語0絛鋲皀僖錙璽押璽爿だ亀舛箸浪燭

2.売り

(編集視点)これまでなかった漫画や絵、時代に合っているか等
(作家視点)現時点での自分の売り  例)女の子が上手、太ももが魅力的等

3.あらすじ

テーマや売りが明確でなければ、企画になってない状態です。キャラクターを作ることも困難でしょう。そうなると、あらすじも書きにくいはずです。
まあ、あらすじは、キャラ作りの後回しにしてもいいと思います。

4.キャラクター表

テーマがはっきりしていれば、とてもおもしろい作業です。私の場合、ヒーロー物語であれば敵を先に作ります。性格や、バックグラウンドは箇条書きにします。また、連載の中で将来的にありえそうな各キャラクターのエピソードも、それぞれ書き加えます。
  『医龍』の野口教授という人の性格を考えるときはこれまで会った人の嫌な性格を総動員しました(笑)この敵に対して主人公を作り、増えていく仲間などを作ります。主人公を作るのは非常に難しいので、作家さんにはここに力を裂いて欲しいです。

5.第一話のストーリー

ここまで作った大まかな設計図をもとに、第一話は作品のつかみと考え、どんなエピソードを盛り込むか決めます。自分の場合は主人公の能力の片鱗、何と戦うのかを見せることが多いです。
  キャラ表まで出来上がっていても、第一話を作るのは難しい作業です。いったん企画書を忘れるくらいのつもりでいいと思います。企画書は、連材全体の理念、または設計図です。一方、第一話は、見知らぬ読者への最初のプレゼンテーションです。大分性質が違います。第一話で企画全てを伝えることはできません。企画全てを伝えようとすると破綻します。お、「この漫画ちょっといいな」と感じてもらえることが何より大切です。

例)『医龍』では、ボールペンで胸を突き刺しての手術を最初の題材としました。1話目で、主人公の能力の高さを表現したかったからです。医療に関する専門知識のアドバイザーの方に食い下がり、面白いネタを考えてもらいました。
6.キャッチコピー(編集者用)

Q.新人はどれぐらいのスピードで作業すればいいのでしょうか。

(石)実は乃木坂先生に電話して聞いてみたのですが、私の考えと同じことを仰っていました。ペースとしては、1週間で描けるものを描きます。その代わり、必ず描くということです。絵の勉強をするためにアシスタントに入るのは効果的だと思います。

Q.連載の題材と読み切りの題材の違いとは?

(石)連載は、A〜Zまで先を想定して、目標に向けて描くことができますが、読み切りでそれをやるとページに収まりませんよね。
先輩や作家さんから読み切りの場合はA→Bではなく、A→A´程度のストーリーの動きで描こうとしないとまとまらないでしょう。
読み切りで大河を描こうとすると破綻するのは当然なので、気をつけてください。

Q.好きな題材で描くのは重要でしょうか。

(菊)トキワ荘プロジェクトでは、歴史、政治など、好きな題材をきっかけにデビューのチャンスをつかんだ入居者がいます。その辺りいかがでしょうか。

(石)好きに越したことはないでしょうが、好きな題材を描いたからといって、必ずしも人気作になるとは限りません。誤解を恐れずに言うと、題材も漫画のごく一部分にしか過ぎないからです。我々が漫画家さんに企画を振る時は、好きどうかよりもその方の売りが一番活きるものを出そうと思っています。好きすぎると逆に面白く描けないこともありますしケースバイケースですね。

Q.スペリオールでは作品の幅としてどこまで許容されるのでしょうか。

(菊)今後雑誌のクラスマガジンカラーを取り払いたいということですが、例えばファンタジー、萌え等どこまでが許容範囲なのですか?

(有)萌えもありだと思いますよ。スペリオールはオジサンの雑誌というイメージがどうしてもあるのでそれを払拭しなければというところですが、確かにすごく面白くても『ちゃお』に載るような作品は載せる勇気はまだありませんね(苦笑)しかしながら例えば少女漫画的なアプローチのラブストーリーだとしても、あくまでも中心読者層は男性という事を忘れなければ問題ないと思っています。
  男性が読んだ時に共感できたり、発見があったりという視点を入れて考えていただければ特に縛りをきつくするようなことは考えていません。学園モノでも、周りの大人たちをしっかり描ければ良いと思います。

Q.新人に求めているものとはなんでしょうか。

(有)可能性、勢い、雑誌の活性化でしょうか。未だ見つかっていないこれからの個性やトレンドがあればと思いますね。巷でもとても評判の良い『信長協奏曲』という漫画があって、高校生の主人公が戦国時代にタイムスリップして信長と入れ替わることになるのですが、主人公はその状況にびっくりすることなくぬるーい感じで飄々と信長を演じていく話なんです。これは昔だったらもっと葛藤を描かなきゃだめだろう、ドラマチックであるべきだろうと思ってしまうようなものですが、そのぬるーい感じが今はウケているし、読んでいると全然気にならないのです。我々世代では分からないところまで来ている感覚があるので、その辺りを新人の方には求めたいなと思っていますね。

Q.どうしたら絵が上達するのでしょうか。

(石)漫画家さんからは、断トツで原稿を描いた方が上達すると聞きます。
漫画には物語を伝える表現力が必要であって、物語の表現力はイラストレーションだけではではつかないものだと思います。

(有)個人的な考えでは、絶対にイラストで練習するよりも原稿で練習した方が良いです。アップがあったり、小さいコマで人間を描いたり背景を描いたり、そういう描き分けの上達をする必要がありますからね。どうしても自分の得意なポーズや表情ばかり練習してしまうものなので、やはりきっちり原稿で描いていくのが良いと思います。

Q.コマ割りが下手で読みづらいと言われるのですが。

(石)作家さんからよく聞くのは、コマ割りというのは作家の個性であると同時に、大切な基礎もありまして、その基礎というのは、次の3点だということです。

 まずはキャラのサイズのメリハリをつけること。
 次に読者の視線の流れを意識すること。読者はS字のように1ページを読むので、あまりそこから外れないようにする必要があります。
 もう一つは、イマジナリーラインというもの。映像に例えるとカメラの位置が急に変わってしまうと人物の立ち位置が変わってしまいますね。これを安易にしてしまう新人さんが多いのですが、これでは読者に混乱を与えてしまいます。もし変える時には演出的な意図を持って、繋ぎのコマを使う必要があります。余談ですが、アクションシーンなんかではわざとカメラの位置を極端に動かして演出を煽ることがあります。基本を理解してやるのとそうでないのでは大きく違ってくるのではないかなと思います。少し極端かもしれませんが、2ページに一度くらい位置関係を示すロングのコマがあっても良いと言う作家さんもいます。

(有)コマ割りが下手で読みづらいというのは、読む順番が分かりにくい、もしくは1ページにコマを詰め込みすぎるというところから来ているんじゃないかと思いますね。一般的には4段で考えて作る人が多いので、その基本をまずは崩さないように。コマ割りが分かりづらいと言われる人は、極力S字で読んでいける自然な流れを作るよう気をつけて下さい。
  コマの多さについては、説明するためにコマが多くなっていないか、ひょっとしたら複数のコマを一つのコマにできるのではないかと考えながらやっていくといいんじゃないかと思います。
他には、先に読むほうの吹きだしを上に持ってきた方が良いです。次の吹きだしはその横、もしくは下です。下から上には視線が行きづらいですからね。

Q.読み切りのページ数が膨大になってしまうがどうすればいいのでしょうか。

(石)そういう新人さんは多いですね(笑)こういうときこそ、編集者の意見を参考にするのが、一番の解決策だと思います。
  まず、何を伝えたいのか優先順位をつけて、余分なキャラクター・エピソードをそぎ落としていくことです。たとえば、主人公の感情を盛り上げていくエピソードを優先したり。テーマと関係ないキャラをばっさり切ったり。
  それでもページを多くとらなければいけないとすれば、他のエピソードを考えてみる必要があるのかもしれませんし、構成に問題があるのかもしれません。

Q.1つの作品に半年や1年以上かかってしまうというのはどうでしょうか?

(石)私の担当した中ではそれでデビューした人は1人もいないのでやめたほうがいいと思います。

Q.インプットや社会経験が足りないと面白い漫画は描けないのでしょうか?

(有)私はそこまで社会経験が必要であるとは思いませんね。もしそうであるならば、描ける幅が極端に狭くなってしまいますよね。経験したことがないことをさもわかっているように描くのがコミックや小説の世界であり、作家の力ですから。

Q.経験不足をどう克服していったらいいと思いますか。

(有)経験していなくても、映画、小説、TVを見て、なぜ面白かったのかなどを考え、感動を分析することができれば漫画に活かすことができると思います。逆に面白くなかった作品に関してはなぜ面白くなかったのか、自分ならどう改善するかという事を考える事も非常に大事です。そんな見方をしていると作品を楽しめなくなってしまうと思いますが、作家にはそういった分析力が必要ですので、我慢すべき点ですね。たまにはわざとつまらない映画を見てみる必要もあるのかなと思いますね。

Q.編集者にもっと読者を意識しろと言われてしまうのですが、どういった見方をすればいいのでしょうか。

(有)新人作家さんで、「作家である自分」と「読者である自分」というのが違ってしまっている人が多く見受けられます。自分も読者の一人なので、その「読者の自分」が面白いと思うものを描いて欲しいと思います。
  基本的には読者というのは、描いている作家のことは何も知らないんですね。作家の生い立ちや価値観や漫画に対する熱意など、作家そのものには興味がないんです。ただ、作家は作家自身に興味のない人達である読者にわかってもらう作品を描くというのが前提になっています。作家の皆さんの「描きたいという意思」というのは、実は「誰かに読んで欲しいという意思」と同軸にあるべきなんです。そうであれば、面白い漫画が描くことができるのではないかなと思っています。

第3回へ続く。

上記の内容など、本講習会に関するお問い合わせはtokiwaso@newvery.jpにお願いいたします。



 
この記事のトラックバックURL
ボットからトラックバックURLを保護しています