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(写真左から菊池、編集長:有藤様、石田様)

10月29日(土)に『ビッグコミックスペリオール』の編集長である有藤智文様、編集者である石田貴信様によりますトキワ荘プロジェクト漫画講習会、【連載作家になる方法】を一般の漫画家志望者向けに開催いたしました。今回はその講義録の第1回を公開いたします。
有藤編集長、石田様、お忙しいなか本当にありがとうございました。

 「連載作家になる方法」講習会
(有)スペリオール編集部 編集長 有藤智文
サンデー、スピリッツ、オリジナル、スペリオールなど数々の雑誌を歴任
担当作品:『風の大地』『高橋留美子劇場』『よいこ』『やったろうじゃん!!』、『しっぷうどとう』『青空』『タッチ』『うる星やつら』など多数
(石)スペリオール編集部 編集 石田貴信
担当作品:『医龍』『幽麗塔』『同窓生』『非婚家族』『ルナハイツ』『タキシード銀』など
(菊)トキワ荘プロジェクトディレクター 菊池健

● 本講習会とトキワ荘プロジェクトのご紹介

(菊)トキワ荘プロジェクトは、「本気で漫画家になりたい人を支援する」という事をコンセプトとし、漫画家志望者に東京の安価な住居を提供してきました。2011年8月で満5年を迎える活動で、これまで200人強の漫画家志望者を支援し、15人がデビューしました。
 これまでトキワ荘プロジェクト内部だけで行なってきた漫画家志望者向け講習会を、今回はビッグコミックスペリオール編集部さまと共催で、広く一般参加可能なものとして開催します。今後は、漫画家の為の税務講習会など、外部に公開する形で講習会やイベントなどを行なっていく予定です。

『ビッグコミックスペリオール』と今回の「新人コミックオーディション」について

・本誌について

(有)ビッグコミックスペリオールは1987年に大学生〜若手会社員向けの同スピリッツ、子供のいる世代向けの同オリジナルの間の20代〜30代会社員を対象としたクラスマガジンとして発刊しました。
 昨今の雑誌低迷の中、クラスマガジン(対象年齢別)を払拭し、新しい「何でもあり」の雑誌として生まれ変わろうとしています。

・新人賞について

(有)これまで、本誌を含めた各誌のエース作家は皆、新人賞から発掘されました。若い力を雑誌に取り入れるため、「新人コミックオーディション」を新たに行います。これは、年2回の新人賞(最高賞金150万円)で、初回は必ず大賞受賞者を出し、掲載します。投稿作は読みきりに限らず、100ページ超大作でも連載作品の1話目でも構いません。

・連載作家になる方法

(有)連載作家になるための必要項目は3つと考えます。

1.実力:画力、話を作る力
2.タイミング
3.運

1は言うに及びませんが、編集者としての長い経験を通し2が非常に重要と考えています。別の作家さんの代理原稿をきっかけにデビューした作家さんがいます。たまたま代理原稿の候補となった作家が2人いて、1人目に電話をした人は電話に出ませんでした。それで2人目に電話をし繋がったため、仕事の機会を得て、そのことで編集部と良好な関係を築き始め、気が付けば売れっ子作家になったという例もありました。
 漫画の実力だけでなく編集と気持ちを通わせ、こまめな連絡を続けることによって、タイミングと運を掴むことも連載作家になるためには重要です。

●プロ漫画家への道のり
(菊)本日のテーマは、「連載作家になる方法」ですが、私どもは今回、漫画家を以下のように切り分けてみました。

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編集者は連載している担当作家の他に、20〜30人の漫画家志望者とお付合いをしていると言われています。その中の数名を実際に連載に向けた「強化選手」として力を入れてお付き合いをし、他は本人の自発的な成長を待つ傾向があります。
 今回の講習会では担当付きになった後、編集者と良い関係を築き、連載作家になっていく過程を中心にQ&A形式で進めていきたいと思います。 プロになるには図のC:担当付、D:連載作家(1回目)までいく必要があります。漫画家志望者の方は自分がどの段階にいるのかを把握して話を聞いてください。

Q.担当されたプロ漫画家の新人時代について教えて下さい。

(石)『医龍』『幽麗塔』の乃木坂太郎先生は、とにかくよくネームを持ってきていました。ペースとしては週に1度。頑張りすぎて行き詰まっていると感じることもあり、そのような時には2週間じっくり考えてみるよう、敢えて言ったこともあります。
 同じような例では大和屋エコ先生も毎週持ってきていました。この方はなんと受賞後2ヶ月で読み切り掲載、1年ちょっとで週刊本誌連載に漕ぎ付けています。持ってくれば持ってくるほど連載に近付くと経験上感じています。

Q.漫画家として続く人の共通点とは?

(石)自分が現時点で持っている実力・売りを把握して、常に描き続けられる人が漫画家としての素養があるのではないでしょうか。
 新人時代はアルバイトやアシスタントの合間に漫画を描くことになると思うので、限られた時間の中で描けるものを作らなくてはいけないですよね。1週間で描けるものを描くということは、そこで力を100%出し切らなくてはいけないということではなく、7割くらいの力で読者に伝わるように工夫するということ。そうすれば、表現力も身についていくと思います。当然、怠惰な手抜きを勧めるつもりではありませんので誤解しないでください。

Q.新人作家が参考にすべきプロ作家の例を教えて下さい。

(有)高橋留美子先生、あだち充先生は漫画もそうですが人間的にも素晴らしい方達です。本当に「聞く耳」を持っていて、新人編集者だった自分の話を聞いてくれて、ちゃんと考えた上で漫画に反映してくれていました。
 ベテラン漫画家であれ、新人漫画家であれ、担当編集の言うことをまず聞き、咀嚼し、そのうえで取捨選択をする。プロでやっている人でこれを実行していない人はいないだろうと思います。「人の言う事に対して貪欲であり、聞く耳を持つ」ということが一番大事ではないかと。

Q.漫画家さんはいつでもどこでも漫画の事を考えているのでしょうか。

(石)その通りで、常にどこかに漫画のネタとして使えるものがないか考えていると思います。そうすると毎日一つは話の種に使えることがあるもので、そういったことを繰り返していると思います。
 すごいと思うのは、担当している乃木坂太郎先生。すごく絵が達者な作家ですが、今でも、さらに上手くなろうと自分を追い込んでいます。どこまでも進化しようとしています。「十分上手いのに、なぜそこまでするのか?」と聞いたことがあります。答えは「現状維持でいいと思うと腕はいつの間にか落ちていってしまう。そして、多くの作家は自分の腕が落ちていることに気付かない。知らないうちに下手になる状態に陥るのが怖い。だから気をつけているんです」ということでした。

Q.スペリオールにおいて連載獲得までの流れを教えて下さい。

(有)パターンとしては、まず読み切りが何度か載ります。その後3〜4回の短期集中連載の準備に入り、それがうまくいけば連載の企画に引き継ぐこともあります。スペリオールでは担当編集者と編集長で掲載の如何を決めます。もう少し大所帯の編集部であれば担当編集の次にデスク、副編集長のOKが出て、その後編集長に持っていくというような流れですが、スペリオールはシンプルイズベストですね。

(菊)連載を決める会議のようなものはありますか?

(有)小学館で複数の編集部を経験しましたが、自分は連載会議というものをやったことはありません。連載をやるかやらないかは全て編集長の一存です。それだけの責任を負っています。

Q.今回の新人賞では、「新しい」「面白い」作品を求めているとあります。そもそも「面白い」漫画とは?

(菊)「面白い」とはどう捉えればよいのでしょうか。既存の作家との比較があるでしょうし、売れそうかどうかを考えるのか、もしくは好みで「この作品にかけてみたい」ということがあるのでしょうか。

(石)その全がありえると思います。さらに付け加えるとすると、下手でも伸びそうだなと思えばそれも含めて面白さである、と。有藤編集長もそう考えていると思います。
 粗削りでもいいから何かを表現しようという勢いを感じられたり、独特の視点を持っている若手が現れると、編集者としてはとても惹かれますね。
 もちろん出来栄えに関してはベテランの作家さんの方が良いと思うのですが、それだけが面白さだとは思っていませんので、思い切った作品を応募いただきたいです。

(菊)石田さんが「うちの編集長もそう考えると思う」と仰ったのはポイントですね。

(石)いま、スペリオールの編集部はすごく誇れるところがありまして、編集部の雰囲気が非常にいいんです。新人コミックオーディションが出来たこともそれと関係していますが、皆やる気があるし、風通しがいい。
 作家さんだけでなく編集も聞く耳がないといけないんですが、そういう意味では有藤編集長は良く話を聞いてくれます。きっと新人さんもやりやすいと思いますよ。有藤編集長がいるうちに受賞されると得だと思いますよ(笑)

(菊)雑誌って編集長の力がかなり強いし、各編集の人は編集長を見て働いているんですよね。編集長によって雑誌の方向性も決まる。
 社会人としての経験からですが、作家さんは一人の編集とだけ向きあうのではなく、担当さんと一緒に編集長に向かっていくという考え方を持つのが重要なのではないかと今日のお話を聞いていて感じました。


第2回へ続く。

上記の内容など、本講習会に関するお問い合わせはtokiwaso@newvery.jpにお願いいたします。



 
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