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                      (写真)里西哲哉編集長

7月23日に月刊『コミック@バンチ』編集長の里西哲哉さまに、
トキワ荘プロジェクト入居者向けに講習会を行っていただきました。
その講義録を3回に分けて公開いたします!
里西編集長、お忙しいなか本当にありがとうございました。

Q.「まずは里西さまのこれまでの簡単な経歴を教えていただけますか?」

 こんにちは。『月刊コミック@バンチ』編集長の里西哲哉です。今日私が語るのは、私自身の経験をもとに語るので、漫画も多種多様なものがあり、いろいろな方法論とかも「答え」というのはきっとないと思っているので参考程度に聴いてもらえればと思います。
私の経歴ですが大体編集の仕事をして今年で11〜12年ぐらいになります。私は大学を出て新卒で新潮社に入社し、出向という形でコアミックスの『週刊コミックバンチ』編集部に入りました。もともと『週刊コミックバンチ』は新潮社がお金を出して、コアミックスという会社が編集をしていたんですね。それでその後、諸般の事情で2010年8月に『週刊コミックバンチ』が休刊になり、新潮社とコアミックスそれぞれで新しい漫画雑誌をつくろうということなりました。以前の『週刊コミックバンチ』では私自身は副編集長でしたが、『月刊コミック@バンチ』の創刊に伴い編集長という立場になりました。2011年1月に創刊した『月刊コミック@バンチ』も6月にコミックスも発売され、少しずつ軌道に乗ってきています。

Q.『週刊コミックバンチ』から『月刊コミック@バンチ』になって変わったことはありますか。
  
 前の『週刊コミックバンチ』の一番最初の編集長が堀江信彦さんという方で、『週刊少年ジャンプ』が650万部を売り上げてギネス記録になったときに編集長だった方でもあります。その彼が集英社から独立して立ち上げた雑誌が『週刊コミックバンチ』だったわけです。そういった経緯があったので、『週刊コミックバンチ』というのは基本的に原哲夫先生とか北条司先生とか昔『週刊少年ジャンプ』の黄金時代を支えた作家さんを中心にスタートした雑誌でした。ですので、対象読者は『ドラゴンボール』が雑誌に連載されていた頃に小・中・高校生だった世代の方で現在30代後半〜40代前半の方を想定しておりました。
  
 その一方で今年スタートした『月刊コミック@バンチ』はもう少し対象読者となる年齢層を下げております。と言いますのは、原哲夫先生や北条司先生の作品が『月刊コミック@バンチ』には掲載されませんので、今までの30代後半〜40代前半の読者が離れてしまう可能性があることを創刊前に想定していたからです。そこでもう少し若い漫画家さんですとか『週刊コミックバンチ』の時とは異なる個性を持つ方を起用してスタートしました。作家さんの男女比も『週刊コミックバンチ』時代は9割が男性作家さんだったのですが、『月刊コミック@バンチ』では女性作家さんが4割くらいいらっしゃいます。読者の性別に関して言えば、『週刊コミックバンチ』の女性読者は1〜2割弱だったのに対し『月刊コミック@バンチ』では3割程度になっています。そういう意味で言うと、『月刊コミック@バンチ』における編集サイドの思惑通りに読者層も少しずつ変化してきているかなと感じています。

 今、雑誌を購読している人が少なくなってきているので、雑誌を読んで作品を知ってもらう機会も当然減ってきています。1月に創刊してしばらくは雑誌のみだったのですが、先日6月にコミックスを出した事で少しずつ書店でもお客さんに認知され始めて、一気に読者層が変わってきたかなと。実は創刊してコミックスがない時と、コミックスが出版された後で面白いデータがあるんです。まだ集計途中ですが、機会があれば、どこかでお伝えしたいなと思っています。

Q.「週刊誌から月刊誌になったのはどういった理由からですか。」

 正直な事を言えば今、週刊誌を創刊するというのはなかなか難しいです。と言いますのは週刊連載をする漫画家さんがどんどん減ってきているからです。特に大人が読む漫画作品というのは絵柄とか中身とか綿密に取材したりもして凄くこだわった作品が多いじゃないですか。それを週刊ペースで描くというのはちょっと厳しい時代になってきたかなと感じています。漫画家さんがこだわりを持って描くものに週刊連載というのは、どんどん現実的じゃなくなってきているというのが漫画業界の中にあります。週刊の漫画雑誌を出せる出版社というのはおそらく大手の数社ぐらいしかないですね。それに週刊の漫画雑誌の創刊というのは、紙媒体だともう今後ないのではとさえ思っています。『週刊コミックバンチ』が創刊したのが10年前ですけれども、それ以降、週刊漫画雑誌というのは出ていないのではないでしょうか。

 週刊の漫画雑誌というのは毎週、作品を載せるわけですから作家を囲う必要が出てきます。週刊連載をするとその作家さんはその雑誌でしか仕事ができないという状況になってしまうので、描いてもらえる作家さんが、どうしても限定されてしまうんです。一方で月刊誌というのは漫画家さんも掛け持ちが2誌ぐらいはできます。こういう状況を考えていくと今後創刊される雑誌は月刊誌、隔月誌が多くなると思いますね。『Fellows!』なんかは隔月誌でやっていますし。作家さんもアシスタントを雇わずにすべて自分で描く作家さんも増えてきているので、そういう方のニーズ、スケジュールを考えるとやはり週刊はちょっと厳しいかなと思います。

Q.「読者層の年齢を以前よりも下げたいというのはどういう理由からでしょうか。」 

 編集の思惑にすぎないのですが、雑誌というのは読者とともに年をとると言われています。昔『週刊少年ジャンプ』を読んでいた世代はもういい大人になって、家庭ができて、漫画を読むのにかける時間がどうしても減ってきています。そうすると、どの雑誌も同じだと思いますが、前からいるお客さんを逃したくはないが、新しいお客さんを取り込まなければならないというジレンマに陥ります。それで我々『月刊コミック@バンチ』に関して言うと、先程も申し上げましたが原哲夫先生とか北条司先生とか昔ながらの『ジャンプ』作家さんが基本的にいなくなってしまったので、若い世代の読者を取り込まなければならないという事になります。あと、@バンチに限らずコミックスを購入してくださる読者が年々若い方にシフトしてきています。今は雑誌で収益を立てようという考えが少し厳しい時代で、コミックスを買って欲しいという希望があるので、若い作品を作って若い読者を取り込んでいきたいとういうことはありますね。

 最近集英社さんで『ビジネスジャンプ』と『スーパージャンプ』が合併しましたよね。『ビジネスジャンプ』と『スーパージャンプ』って、昔、我々が作っていた『週刊コミックバンチ』と近くて職業物の作品が多く、サラリーマンの読者が中心の雑誌でした。そういう作品というのは実はコミックスが売れにくい傾向があり、そうなるとTVドラマ化など他の媒体での展開を狙ってやっていくという方向になっていきます。「漫画雑誌における連載作家の構成というのはどのように決まるものなのでしょうか?」これは『月刊コミック@バンチ』に関してという前提でお話します。連載するラインナップを決定する判断基準は2つあります。

 1つは、ます名前のある作家さんは何人か載せておきたいという事です。やはり名前の売れた方は、雑誌を売る起爆剤にもなりますので。また売れている作家さんを使うのは、雑誌を売るためには編集部としてはニュースにしなければならないという命題があるというのも理由です。今、月刊漫画誌というのはごまんとあって、ただ雑誌を出しているだけでは書店で埋もれてしまいます。そこでMANTANWEBさんやコミックナタリーさん、その他の昔からあるニュース媒体等で取り上げて頂けるように、さまざまな企画とか作家さんでネームバリューのある作家さんを起用したいとなってくるわけです。

 もう1つは新人作家さんでも、才能のある作家さんはどんどん投入していきたいなと考えています。これは私の実感なのですが、漫画は書店で売るものなので、書店員の方の感性を大事にしています。売れていてネームバリューもある作家さんだけでなく、有名だけどあまりコミックスとかは売れていないという方もごまんといるんですね。それで無名だけど若くて才能のある作家さんを自分の書店から売り出したいという意欲を持っている書店員さんは結構多いです。どの雑誌も同じことだと思いますが、若くて才能のある作家さんを見出したいというのは我々も同様に考えています。
もちろん売れていてネームバリューもある作家さん、例えば荒木飛呂彦先生ですとか浦沢直樹先生みたいな大作家さんが描いてくれれば理想なのですが、そういう作家さんはそんな簡単に移籍はしないです。となると、現状で言えば雑誌を盛り上げるために名前のある作家さんを起用しますが、一方で才能のある新人作家さんも主力として起用していきたいというのが『月刊コミック@バンチ』のコンセプトですね。

Q.「なかなか言語化しづらいとは思いますが、漫画家にとって才能とはどのようなものでしょうか」

 「才能」というのは、いろんな才能があるのでやはり一概には言えません。
例えば弊誌の作品で言うと『GANGSTA.』は単行本が7月に出ましたが、1週間で重版が3回ぐらい掛かっていますので相当売れています。実際に作品を見てもらえればと思いますが、絵柄とか雰囲気とか、なかなか言葉にすることが難しいのですが、原石からして既に才能を感じさせる作家さんだと感じています。

 『軍靴のバルツァー』もかなり売れていますし、絵もうまいのですが、とにかく作家さんが鉄砲とか大砲とか、軍服なんかを描くのが大好きな方なんですね。大好きで大好きで、愛情を持って描くというのも1つの才能であると思います。

 とにかく才能というのはここで論じれるほど簡単な話ではありませんが、秋葉原で大ブレイクして発売翌日に重版を掛けた『あねちゅう!』は、読んでみるとびっくりされると思うのですが、すごく変態的なストーリーなんですね。ある意味で言うと、その人にしかない武器をきちんと持っているかどうかということが才能なのかなと思ってもいます。みなさんも漫画でキャラを立てろとかよく言われると思いますが、作家のキャラが立っているかというのも重要な才能ではないでしょうか。作家のキャラが立っていない場合、色々と戦略を考えていかないと埋もれてしまうということになってしまうかなとは感じますね。

Q.「同じ雑誌であっても、この作品はこの読者層に、こっちの作品はこの読者層だとかコミックスの売れ方は全然違うものですか?」

 実は、うちの雑誌のスカウトは特殊な状況になっています。というのは『月刊コミック@バンチ』には前の『週刊コミックバンチ』から継続して連載をしている作品が結構あって、その一方で月刊誌になってから新しい作品が入ってきました。普通、雑誌を創刊するときには基本的には似たような作風のものを集めるのですが、『月刊コミック@バンチ』に関しては先程申し上げました通り、継続して連載されている作品があったので、1つの雑誌でも個々の作品を見ると読者層が分かれているというのがあります。そのため、結構営業が大変ですね(苦笑)例えば『あねちゅう!』という作品は秋葉原とかで漫画やゲームを買われる男性に読まれて人気に火がついた作品なんです。一方で、

先ほど紹介した『GANGSTA.』は明らかに女性の読者が多かったりします。そういう意味では『月刊コミック@バンチ』は他の漫画雑誌に比べると特殊と言えるかもしれません。本当は、0からスタートする漫画雑誌はイケメンや渋いオジさんを出して女性向きを目指したり、かわいい女の子を入れて男性読者をターゲットにするとか絞り込みを行うのですが、良くも悪くも雑誌としては特殊なスタートでしたので、ある意味ごった煮的な感じはありました。『月刊コミック@バンチ』で連載している古屋兎丸先生とかカサハラテツロー先生とかはどちらかと言うとコア系です。そこにさらに男性のアキバ的な方向のものと、女性のアニメイト系の作品が混在しているような感じですね。

Q.「『月刊コミック@バンチは』は青年誌に入るのでしょうか。」

 難しい質問ですね。今、少年誌とか青年誌とか年齢によるジャンル分けが崩れてきている時代というのが私の実感です。あと男女でのジャンル分けもですね。少年誌と少女誌というのはあると思うのですが、これは直接聞いた話なのですが集英社さんは今までは女性誌と男性誌がはっきり分かれていたらしいです。ところが最近、『ビジネスジャンプ』と『スーパージャンプ』が合併しましたとか『アオハル』が出たとか『ジャンプ改』が出たとか、男女を区別しない雑誌を出し始めています。講談社は『月刊アフタヌーン』とか小学館は『IKKI』とかがあって、コア層の読者があって、男女を含めて取り込む雑誌があるのですが、集英社は今まではっきりと分かれていました。

この漫画雑誌において男女の区別がなくなっていくのは業界の最近の流れかなと思っていまして、少年誌・少女誌と明確な方向性を持つ雑誌がある一方で、その狭間にある雑誌というのがどんどん増えてきています。『月刊コミック@バンチ』に関しては、ジャンルを分けるとすると青年誌になるのかなと思っていますが男女とかを極力分けずに、包括して行く方針です。正直、雑誌で収益を立てようとする考えが、出版社としては薄れてきています。我々に関してはっきり言うと、コミックス勝負です。そういう流れになっていますので漫画雑誌というのは、あくまでアイコンとして機能しているというのが現状です。作家の皆さんは、やはりまだまだ紙で本屋に並んでいないと安心出来ないと言う方も多いですし、特に月刊青年誌はそういう役割がどんどん強くなってきいるんじゃないでしょうか。

 話が少しそれますが、雑誌というと何十万部出ているイメージが一般にはあるじゃないですか。少年誌で『週刊少年ジャンプ』とかはまだ何百万部という世界ですが、月刊の青年誌は結構一万部切ってますね。大手の出版社から出ている月刊、または隔月誌でも3,000〜5,000部ぐらいで推移しているものも多いと思います。そういう意味で言うと、人件費と原稿料を払うと雑誌としては大赤字になります。そういう状況に現在はなっているので、雑誌は赤字覚悟でコミックスで利益を得るというのが決して良い事だとは思いませんが現在の月刊青年誌の常識です。

Q.「雑誌よりもコミックスが売れているのは、やはりコミックスのみを買う人が多いということですか。」 

雑誌で買って作品を追うという読者はだいぶ減りましたね。好きな漫画をコミックスで読んで雑誌は買わないという人は多いと思います。立ち読みとかできるならまだしも、月刊誌とかって書店やコンビニでは綴じられて立ち読みができないじゃないですか。それをわざわざ買って読む人はあまりいないと感じています。単行本でまとめて読んだ方が面白いし、分かりやすいという気持ちは分からないわけじゃないです。そういう意味で言うと、漫画雑誌としては週刊誌の方がやりやすいと思いますね。例えば『週刊漫画ゴラク』さんとか『週刊漫画サンデー』さんですとかコミックスで読むというよりかはラーメン屋とかに置いてあってちょっと暇つぶしに読むみたいな感じの方が雑誌の売上では元気だったりしますね。

Q.「コミックスではなく雑誌で主な収益を得るとなると、作家さんの収入は主に原稿料でしょうか。」
 
 そういう雑誌でやられている作家さんは印税が期待しにくいということもあり原稿料が主ですね。とは言え、原稿料というのはアシスタントさんを抱えているとアシスタント代のみでなくなってしまうということが多いので、雑誌によって作家さんの収入の流れも違うと思いますが、コミックスを売って印税で儲けてもらわないと苦しいというのが実情です。

Q.「今日の講習会のテーマとして『ジャンル』というものをあげているのですが、『ジャンル』というのはどういったところ分けられるのでしょうか」
 
 これは難しいですよね。私は女性誌とか少女誌とかの経験がないので何とも言えないのですが、世代によるジャンル分けのラインが薄くなってきているかなと感じています。昔は幼年誌(コロコロコミックなど)があって、少年誌(ジャンプ、サンデー、マガジン、チャンピオンなど)があって、ヤング誌(ヤングジャンプなど)というのがあって、青年誌(モーニングなど)、があって、大人雑誌(ビッグコミックなど)がありました。現在は幼年誌と少年誌の間にはまだ違いがありますが、少年誌とヤング誌、青年誌は読者層が重なってきているという感じがします。『ビッグコミック』とかは『漫画ゴラク』、『漫画サンデー』と同じ括りになりますが、世代別のジャンル分けは昔のようにはっきりと分かれていなように思います。それと今言ったのはすべて週刊誌なんですね。月刊誌でいうと例えば『ウルトラジャンプ』とか『ジャンプSQ』とかって中高生も読んでいるし、大人も読んでいるしわからないですよね。月刊誌では、そういった世代によるジャンルの区別が週刊誌よりもなくなってきていますね。

Q.「月刊コミック@バンチさんが雑誌としてターゲットとしている層はどういったところでしょうか?」 

 『月刊コミック@バンチ』では、書店に足を運んで漫画を買う意欲がある読者をターゲットとして想定したいと思っています。昔の『ジャンプ』を読んでいた世代というのは荒木先生、井上先生が掲載されていると、反射神経的に買ったりする事があります。しかし、その世代の方は、もはや書店の新刊棚に行ってコミックスを物色して買うという人が少なくなっているのが現状です。そうやってコミックスを選ぶ余裕がなくなってきているんですね。そういう意味で言うと若い方は、まだそれを行う余裕があるので、新刊棚に行って、帯とか絵柄とかを見て面白そうなものを買うということをする可能性が高いです。より買う意欲を持っている人に買ってもらうということを意識して、雑誌作りをしています。

漫画を普段読まない・読まなくなっている人に読ませるのはホントに難しいと思います。例えば井上雄彦先生が『スラムダンク2』を描きますとか、そういうことになれば今まで漫画を読まなかった、あるいは漫画から離れた人も読むようになるかもしれませんが、そういうことはそうそうありません。今日ここで講習会に参加されている新人漫画家の皆さんも半分読者であるという面も持っていると思いますが、そういった方など書店に足を運んで漫画を買う意欲がある人を主な読者として想定していますね。みなさんもまずはそういう人が、自分の作品を最初に読んでもらう読者であると想定して創作をするのがいいと思います。

次回へ続く。

上記の内容など、本講習会に関するお問い合わせはtokiwaso@newvery.jpにお願いいたします。

 
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