去る10月19日(日)、雑誌『マリカ』編集部の宮武芳江さまに
第5トキワ荘(男子寮・西高島平)にスタッフと共に訪問して頂きました!

トキワ荘入居者の方にとって、漫画制作上の悩みなど、
さまざまな思いをぶつける良い場になったと思います。

またお忙しい中にも関わらず、宮武さまには
講師役を務めていただき、本当にありがとうございました!

本日はその内容をQ&A形式で掲載いたします。




(1)新人心構えについて


Q.持ち込みに行くにも勇気が必要で腰が引けてしまう。
A.編集を利用するぐらいの意気込みでないとデビューできない。直接会って意見が聞ける持ち込みの方が投稿より断然情報量が多いので、変な遠慮は無用、どんどん活用するべき。編集側も手探り状態だったりする。


Q.編集者の方は、どこで上手い下手を判断しますか?
A.自分は上手い下手は構図やコマ割りで判断する。
 ・構図の取り方にはセンスが要る
 ・構図は、ここが見せたいというのがわかっていると自ずと決まってくる
 ・作品の中でどこが重要なのかをメリハリで示す


Q.首都圏に住んでいて投稿しようか持ち込もうか迷っているのですが…。
A.投稿よりも直接意見を聞ける持ち込みのほうが断然いい。編集者に鬱陶しがられるくらい、持ち込んだ方がいい。
 ・いろんな編集者の意見を聞くことでサンプルが増える
 →同じ反応をする箇所、意見が異なる箇所など


Q.編集者との付き合い方で悩んでいる。
A.編集者は漫画を描けないからこそエラソーに言える面もある。
 →そんな編集者をどうやって“わからせるか”を考えるのも漫画家の仕事(アイツに「面白い!」と言わせてやる、が原動力になる場合も)
 ・担当がついたら、その人は大事にした方がいい
 →担当は自分の作品の第一のファンでもある


Q.映画はたくさん観たほうが良いですか?
A.マンガ表現と共通するテクニックが多いので、観ていないよりは観ているほうがいい。映画好きは良い漫画家になるケースが多い。同様に本もたくさん読んだ方がいい。


Q.作品を描いていて、いつも思い通りにいかず最後まで完成させられません。
A.プロの作家でも、100パーセント満足がいくまで一作品に力を入れられている人はほとんどいない。
 →自分の売り・長所を生かして、読み手に求められている事をやる。(女の子が可愛く描ける等。)まず第一にわかりやすい事を心がける。次に読者に面白さや喜怒哀楽、なんでもいいので、とにかく感動を感じさせる事。どれだけ読者を気持ちよくしたかで単行本の売れ行きも変わる
 →商業漫画家はクリエイターでもあるが、サービス業でもある自覚を持つ


Q.最近、なかなか原稿に取り組めません。
A.漫画を描いていて楽しくないのでは?
 ・漫画を描く楽しさを忘れているのかもしれない
 ・「絵が上手い」など褒められた経験から漫画家を目指している人も多いはず。そのときの気持ちをもう一度思い出して欲しい。漫画を読んで救われた、感動したなどの気持ちを思いだして、ぜひ次代の読者にもその気持ちを与えてあげて欲しい


Q.途中で「この作品は本当に面白いのか…」とつい考えてしまう。
A.デビュー前の志望者は、迷わず描く。
 ・止まると時間をロスするだけ
 ・絶対にデビューできると思って描く
 ・「自分は天才」と信じて描くべき
 ・時間を置けば置くほど迷いが生じる。そう思う前に完成させた方がいい
 (
本当はネームの段階でとにかく推敲を重ねて、迷いを打ち消しておくとよいが、考えすぎると手も止まるので、慣れるまではとにかく描くべし)


Q.絵はそこそこ出来ていると言われるのに中々先へ進めない。
A.絵が雑でもヘタでもデビューしている人は多い。
 ・彼・彼女らは効果的な「見せ方」を理解している
 →作品のテーマをダイレクトに伝える能力が高い


Q.何で皆あんな作品が面白いと思うのか理解できない。
A.自分では面白くないと思っても、なぜ売れているかは分析した方がいい。
 ・「売れれば官軍」、それだけ賛同者が多い作品という事実は見逃せない



(2)読者や少年誌について等

Q.雑誌が求めている作品はどうやって調べればいいのですか?

A,アンケート項目は、雑誌がどういう作品を求めているかのヒントでもある。
 ・例えば「関心のあるスポーツは何ですか?」→スポーツものの企画を検討している
 ・「併読誌を以下の中からお選びください」→読者層が類推できる


Q.少年誌向けの作品を描く時に女性読者の事も考えた方が良いのですか?
A.余裕があるならある程度は意識した方が良い。
 ・女性はグッズやメディア商品に子供以上にお金を出してくれる
 (アニメや舞台、ゲームなどの関連商品、コスプレ、同人誌などマーケットの拡大が見込める)
 →多彩な男性キャラがたくさん出てきて、仲良くしているのを見るのが楽しい
 (やおい、BLなどの要素。ただしこれは意識して盛り込めるものでもなかったりする…)


Q.週刊少年ジャンプに持ち込もうと考えているが、どういうヒロインが良いかわからない。
A.週刊少年ジャンプのヒット作でヒロインが目立っている作品はほとんどない。
 →没個性でOK。ヒロインより男性主人公のキャラ立てを重視するべき
 ・一部例外あり(最近だと『To LOVEる -とらぶる-』等)


Q.少年誌志望で持ち込みを考えているのですが…。
A.少年誌志望の人は、とりあえず4誌(ジャンプ・マガジン・サンデー・チャンピオン)とも持ち込んだ方がいい。各編集部ともに投稿者のカラーも偏りがちなので、意外な雑誌で意外な形で認められる場合もある。


Q.青年誌向けを描く際に、意識した方が良い少年誌との違いは?
A.青年誌では大人や社会をきちんと描(えが)く必要がある。
 ・取材などでも補えるが、作者自身も趣味や経験が多彩な方がいい


Q.多くの読者は漫画に何を求めていますか?
A.人生って実はそんなに面白くないし、ツマラナイ。
 →現実逃避できるような娯楽を求めている。
喜怒哀楽の感動のうち、どれかをささやかでも提供できればしめたもん


Q.でも人間って好みがそれぞれ違うからどういう事を意識すれば…。
A. 完全なる非日常(SFやファンタジー)、日常の中の非日常(学園もの・ラブストーリー等)、日常の中の“おもしろい”日常(エッセイ等)etc. 
当たり前の日常やできことを、ただ当たり前に描いても娯楽にはならない。ネタやアイデア、設定が斬新ならそれだけでも娯楽たりえる。逆にアイデアが凡庸だとしても、強調・誇張・フィクションなど、見せ方や演出でいくらでも面白くなりうる。どんなポイントでもいいから、読み手に「何か」を残すこと。たとえ細かいあらすじは忘れられても、「面白かった」という好意的な印象は残るはず。


Q.少年誌を目指す上での心構えはありますか?
A.少年誌に持ち込む人は自分が昔どんなことにワクワクしていたかを考えてみる。同じ子供目線に立って描くもよし、ちょっと大人目線で描いて背伸びしたい子供の知識欲・好奇心を満たすのも手。


Q.読者層や雑誌の事など考える事が多すぎる。
A.制約があるほど漫画は面白くなる。少年誌は特にそうなのでは?




(3)テクニック(作画以外も含む)


Q.コマ割などに関してアドバイスはありますか?
A.意味のない変形ゴマはしない方がいい→意味がなければ読みづらいだけ。
 ・「タチキリ」を使った方が画面に広がりが出来、迫力が出せる
 ・左右の目線の移動、めくりの効果も利用する
 ・ふきだしの形も工夫した方がいい(ふきだしによる感情表現、絵を邪魔しない配置など)
 ・読者の視点や目線をコントロールしてこそナンボ


Q.女の子はどう書けばいいのですか?(少年誌・青年誌)
A.女の子はとにかくカワイク描いておいて損はない。
 ・2、3コマの出番でもとにかくカワイク描く
 ・作品に愛着を持つためにも、命をかけて自分がカワイイと思う女の子を描くべし


Q.漫画に登場するキャラクターは少なくても大丈夫ですか?
A.連載では多彩なキャラを出す必要がある。
 ・読者の感情移入の選択肢が増える、ストーリーに幅が出る
 ・一方、読みきりではサブキャラを生かす余裕があまりない
 →読みきりで大切なのは「インパクト」


Q.作中で説明する事が多くてページ数が増えてしまう。
A.先人の漫画記号(読み手も約束事として知っているデフォルメ表現、トーン効果など)を利用すれば無駄な説明は減らせる。どんどん活用すべし。
 ・不要な表現を減らせる=ページ数を減らせる
 ・うまく使えば“ベタ”は最強、斬新なコマやエピソードがそのぶん際だつことも


Q.作画に時間が掛かりすぎてしまうのですが…。
A.絵は丁寧に描き過ぎると時間がいくらあっても足りない。
 ・何が大切なのか、どのコマ・どのシーンが重要なのかを考える。デビュー前は締め切りのない自由な時期、と割り切って好きなだけ時間をかけ、完成度を上げるのもアリ
 (デビューすると、どうしても手を抜かなくてはならない時が来ます)


Q.グロい表現はどこまで許されるのか?
A.本音は面白ければ何でもあり。
 →ただし意味のある「グロさ」であること
 →ただ単にグロい絵を描いてもそこまで怖くはない
 (グロさは、それを見た登場人物の反応等でも表現する読み手にリアルにグロさを感じさせることができなければ描かない方がマシ)


Q.全体の流れよりも描きたい場面が先に思いつくのですが…。
A.このシチュエーションやエピソードを描きたいという動機は大切
 ・そのために必要なエピソードやキャラクターは?それが商業誌で許される設定は?など、後づけで作品を組み立てていくのも有効


Q.絵を描くのは好きなのですが、物語を考えるのが苦手です。
A.まずは物語をA地点からB地点まできちんともっていける事に取り組む。主人公が成長した、出来事が進展した等、わかりやすいゴールを設ける。


Q.人のマネをしていてはダメだと思うのですが…。
A.パクれとは方式(=売れている要因・魅力)をパクれという意味。
 →決して漫画自体(絵柄やエピソード、アイデア)をパクれという意味ではない。パクった上で、時代にあったオリジナリティを出している作品が実は一番売れている




(4)「見せ方」「わかりやすさ」「メリハリ」について

Q.設定が複雑で、話がわかりにくいとよく言われる。

A.設定が奇を衒(てら)っているほど、ストーリーはベタに。
 ・設定もストーリーも奇を衒(てら)うと作品がおかしくなるだけ
 →読者もついていけない
 →基礎をふまえてからの抽象表現


Q.漫画を描く際にどこに重点を置けば良いですか?
A.新人のうちはハッピーエンドにしたほうがいい。
 →バッドエンドに挑戦するのは自らハードルを上げるようなもの


Q.作品を見せると「何が言いたいのかわからない」と言われた。
A.ある事を読者に伝えたいときは、あえて他を削る事も大切。
 →単にエピソードを増やして散漫にするのではなく、一番伝えたいテーマを常に目立たせる構成にする


Q.どうしても台詞が多くなってしまう。
A.文字で説明するのではなく、絵や台詞の言い回しで説明する。
 ・文字だと無駄な情報が増えてしまう=不要なページも増えてしまう
 (キャラクターの性格やポジションは服装やしゃべり方で意外に説明できてしまう)


Q.設定や見せ方を考える際に何かアドバイスはありますか?
A.一例として、ショボイ設定でも絵がハデだと面白い。
 (「意外性」を出すため、正反対のものをぶつけてみたりする)


Q.なぜ「わかりやすさ」が大事なのですか?
A.読者は頭を使ってまでわざわざ新人の漫画を読みたくない。
 ・雑誌などはパラパラと眺める程度の人も多い
 →絵柄に関して言えば、そこに目を引く絵(カッコイイ扉ページ、わかりやすいエロシーン、センセーショナルな大ゴマなど)があれば、ページを戻して読むという場合もある


Q.(今回参加したトキワ荘入居者の)絵を見て感じる事はありますか?
A.みんな絵にまだまだメリハリがない。
 ・全部均一。どこを見たらいいのかわからない、視線が誘導されない




(5)「新しさ」について

Q.目新しいエピソードが思いつかないのですが…。

A.大した事がないエピソードでも、絵の力でスゴク見せられる。
 ・普通の事、日常の事でも絵の「見せ方」だけで面白くできる
 →1コマでも、そういうコマがあれば作品はグッと良くなる
 →あえて、他のコマはランクを下げる(引く)ことも大切
 →全てのコマに力を入れると何が重要なのかがボケてしまう


Q.どうしてもアイデアがありがちな、つまらないものになってしまう。
A.アイデアは実はありがちでもいい。
 ・作品のおもしろさは「見せ方」「伝え方」で決まる
 ・「ふつーに面白い」が実は一番技術がいる


Q.ふと斬新なアイデアが閃いたのですが。
A.自力でネームに組み込めず、作品に反映できないような思いつきは却下。投稿している雑誌の読者層やジャンル風にそぐわないと判断した場合も却下。書き留めておいて後日、実力が伴ってから再度取り組んでみる。斬新すぎるアイデアに振り回されるとかえって作品が成立しなくなる危険性も。


Q.「新しい」作品を考えているのですが、なかなか思いつきません。
A.世の中にもう完全に「新しい」ことなんてない、と思った方がいい、結果として「新しい」と受け取られるだけ。
 ・少なくとも我々が思いつく程度のことは先人が既にやっている。新人は基本である「伝えたい事を伝える」という点にまず専念すべき。その熱意が時として「新しさ」になる


Q.作品が古いと言われたので、今度は誰も扱っていない題材でいこうと思うのですが…。
A.誰もやっていないことは、ただ「つまらない」だけという可能性がある。
 ・「つまらない」からこそ誰もやっていない=リスクがある
 ・「新しい」と単なる「メチャクチャ」は違う
 ・「新しい」ことに挑戦するには、それを乗せるに耐えうる面白さの裏付けが必要になってくる



以上です。

上記の内容など、本講習会に関するお問い合わせは
tokiwasou@kotolier.org(担当:番野)にお願いいたします。


 
Trackback(0)
この記事のトラックバックURL
ボットからトラックバックURLを保護しています